①スケーリング後の歯です。
歯の中央に黒い着色が見られる部分が虫歯です。
虫歯は歯の表面にあるエナメル質欠損により出来た穴から内部へと侵入し、歯の内部でう蝕を広げるため虫歯患部は黒い着色が 周りにも薄くにじんで見えるのが特徴です。
この様な状態の場合は、ワンちゃんも痛みや不快感を感じている事が多いため、食欲不振になっていたり、手足で口を気にする仕草も見られます。
視診でも、虫歯の菌が内部でどこまで広がっているかの判断が可能なため、人間の歯科用研磨機具を使い、虫歯になってしまった部分を研磨・切削していきます。
②虫歯を全て除去した様子です。
虫歯のう蝕は歯の神経(歯髄)まで到達しているため、歯髄が見えるまで歯を切削し、歯髄の治療が必要になります。
また、切削した部位の大きさから被せ物が必須になる事が分かるため、被せ物は接着し易い形状へ歯を整えておきます。
③歯の中央に見える2つの赤い部位が歯髄です。
この虫歯の場合は、歯髄までう蝕が進行し、内部で炎症を引き起こしている状態です。
炎症は初期段階のものですので、歯髄を抜く抜髄処置を行います。
発見が遅れた場合は、さらに炎症が進行し歯髄の根っこ(根光部)まで 感染が広がってしまいます。
その場合、菌が全身へと転移してしまい身体に重大なダメージを与えてしまいますので 早期の治療が必要です。
日常生活で硬い玩具で遊ぶのが好きな子は、その最中に歯を欠損し、飼主様の知らない所で病状が進行してしまうケースも多いですので配慮が必要です。
④歯髄を取り除きます。
虫歯の痛みの原因になっている歯髄を取り除き、根管内を無菌状態にする抜髄処置を行っている様子です。
とにより、根光部まで歯髄を完全に取り除き、治療中に歯に掛かる負担を最小限にし、虫歯の再発を防ぎます。
歯科治療では歯根の治療が目には見えない部位のため一番難しい施術です。
特にワンちゃんの歯の根光部は、人間と違い開いた形状をしているため、歯科治療の経験の多さと歯の構造を熟知していなければ 完治は難しいと言えます。
⑤抜髄処置により根管内は空洞になります。
そのため、根管内には神経に変わる薬と治療後の炎症を抑える薬を詰めます。
薬にもさまざまな種類がありますので、術前に行った検査結果を基に、その子に一番合った薬を使用していきます。
⑥最終的な詰め物をした後
最終的な詰め物をした後の被せ物の治療方法は大きく分けて2つ考えられます。
1つ目は金属を被せていく方法、2つ目はハイブリッド素材によって元の形に 作っていく方法です。
このケースは、後者の方法を選択しています。
ハイブリッド素材での治療は元々の歯が多く残っている事が前提になりますが、審美性も良く、削る歯も最小限で済み、1回の治療で完治可能な最短の方法です。
被せ物には種類もありますので、飼主様のご意向や治療している歯に合わせて 最適な素材を選択します。
⑦噛んだ際に違和感を感じさせないため
噛んだ際に違和感を感じさせないためにダイヤモンドバーで元の形状を再現します。
さらにシリコンで表面を平滑にし艶を出します。
せっかくの治療を行ってもこの工程を怠ってしまうと、歯と被せ物に多少なりとも段差が生じているため、そこから虫歯が再発したり、着色や歯垢・歯石が付着してしまう原因となってしまいます。
ホームケアもし易くするためにも、重要な工程の1つになります。
⑧噛み合わせを確認
最後に治療前の写真と見比べ、噛み合わせを確認し完成となります。